RGM-86物語

作:澄川 櫂

 ここに一組の図面がある。
 型式番号RGMー86。正式採用決定の押印はあるものの、名称は記載されていない。型式からして、後にRGMー86R“ジムⅢ”として量産される、地球連邦軍主力モビルスーツの原型と思しき機体だ。
 全体にRGMー79N“ジムカスタム”とRGMー79R“ジムⅡ”の折衷的なデザインだが、バックパック形状はRGMー79SP“ジムスナイパーⅡ”のものと酷似している。左側にサーベルラックを追加している他は、これといった外観上の違いは見当たらない。肩形状がフラットではなくRGMー79Q“ジムクゥエル”に近い形をしているのは、設計当初は支援機としての運用を考慮していなかったためであろうか。
 一見、そつなくまとめられたように思える機体だが、実はこのRGMー86、一度も実戦配備されることなく姿を消した、幻の正式採用機である。今回はそんな数奇な運命を辿った機体の顛末を紹介したいと思う。

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