RGM-86物語

作:澄川 櫂

3.改良と限界

 RGMー86の改良に費やせる時間は限られていた。ティターンズ対エゥーゴという内乱状態が日々激化する中、連邦軍技術陣は即効性あるプランを早々に示さねばならなかった。だが、ティターンズに主導権を譲った連邦軍本家が自由にできるリソースは限られており、彼らの頭を悩ますこととなる。
 最終的に彼らが採用した手法は、自軍の持つ技術の中では最新と思えるRXー178の設計を流用する事であった。極秘プロジェクトであったRXー178の設計図は、エゥーゴに機体を奪取されたこともあって開示されていた。エゥーゴの機体製造を担当したアナハイムエレクトロニクス社の技術と組み合わせるよりは、親和性が高いと踏んだのだ。
 バックパックとジェネレータをRXー178のものに換装し、新たに開発したスラスターユニットを脚部に追加することで、RGMー86の機動性は向上した。だが、仕様変更に伴って重量も増したために、性能向上効果は限定的であった。基本設計を変えずに機体を軽くするためには、装甲材を変える必要がある。だが、元がセミモノコック構造である以上、張り替え可能な範囲には自ずと限界があった。
 結局、機体の基本構造に影響しない頭部と腕部を、追加パーツ(バックパックを含む)と同様にガンダリウム合金で新造し、まるごと交換することによって機体の軽量化を実現したが、新規に生産するにはいかにもちぐはぐな構成であった。
 改修なった機体そのものは良好な成績を示した。しかしながら、続々と登場する新規設計モビルスーツ群に比較すると中途半端な感は否めず、以後十数年に渡って運用するには非力であると判断された。
 次期主力モビルスーツ開発としてのRGMー86プロジェクトは、こうして一時凍結が決定する。

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